田所研究室におけるレスキューロボット・レスキューシステムの研究開発は,1995年の阪神淡路大震災を機に始まりました.震災直後の調査研究をその基盤として,多くの研究者の英知を集積することによってこの問題に対するソリューションを導き出そうとしています.NPO法人国際レスキューシステム研究機構(IRS)を立ち上げ,大都市大震災軽減化特別プロジェクト「レスキューロボット等次世代防災基盤の開発」では,全国30の研究グループの協力のもと実用化のプロトタイプとなる災害情報収集ロボットの研究開発を行っています.また,ロボカップレスキュー,IEEE TC on Safety, Security an d Rescue Roboticsを立ち上げるなど,レスキューロボットに関係する世界的な研究活動を推し進めています.
また,平成18年度より,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクトとして,被災建造物内RTシステム「閉鎖空間内高速走行探査群ロボット」の研究開発を全国7研究組織と共同で開始しています.
「三次元地図構築」,「索状体のアクチュエーション」もレスキューシステムの一貫として研究を行っています.
レスキューロボットQuinceは,優れた運動性能と計測機能により,人間に代わって災害現場をはじめとした危険な環境の情報収集を担うことで,円滑な救助活動の実現と,救助に従事する人間の二次災害防止を目的としたロボットです.全身を覆う移動用のクローラベルトと,4本のサブクローラ(腕のように可動するクローラベルト)を駆使することで,階段や不整地と呼ばれる起伏の激しい地形での高機動性を実現しており,運用目的に応じて計測機器やマニピュレータといったオプションを追加することができます.田所/昆陽研究室では,このロボットへの付加機能として,操縦者のスキル不足を補う操縦支援や,環境の計測に基づく探査環境の3次元地図の構築に関する研究を行っています. |
サブクローラを有するクローラロボットQuinceの遠隔操縦を支援する技術の研究開発を行っています.遠隔地にいる人間がQuinceを操縦して,被災現場を探査します.しかし,被災した建物内部の段差や狭い場所を遠隔操縦で安全に走行することは簡単ではありません.そこで,人間では操作することが難しい部分をロボットが自律的に補う機能の開発を行っています.これまでの研究で,ロボットに進行方向を指示するだけの簡単な操作で,階段や段差を踏破する複雑な動作を実現できるようになりました.提案手法の有効性は,三宮地下街,レスキュー隊員の訓練施設などの環境での実験を通して確認しています。 |
クローラロボットの自律制御システムの実現のため,クローラ表面の接触位置や接触圧を計測する分布触覚センサを開発しています.クローラロボットの段差踏破や,転倒回避を安定して行うためには,クローラと瓦礫表面の接触位置と力の把握が必要不可欠になります.クローラ表面に分布触覚センサを取り付けるには,計測方式,構造,配線方法などが問題となります.これらの問題の解決策する方法として,光方式,感圧方式の分布接触センサの研究開発を行なっています. |
移動ロボットに搭載したレーザースキャナを用いた3次元計測に関する研究を行なっています。移動しながらリアルタイムで広範囲の環境情報を詳細に集めることで,ロボットの遠隔操縦を支援することや,現場の状況を確認することができます。 |
計測された3次元点群から環境を認識しやすくするため,細い物や地面,壁,がれきなどに分類する研究を行なっています。分類には,点群の空間への広がり方や,レーザーが通過したかどうかによって行います.分類された結果を対象物によって色分けすることで,物体を判別しやすくします。 |
移動ロボットの操縦訓練、関連要素技術の開発促進を目的としたシミュレータの開発を行っています。ロボットの動作を記述するプログラムのレベルで実機との互換性が極めて高く、実機搭載前の要素技術開発や,動作検証に有効です。ロボットの動的な振る舞いを世界中で用いられている移動ロボットシミュレータのUSARSimを用いることで実現しました。 |
田所研究室ではレスキューロボットに搭載するための小型複眼カメラシステムのハードウェア、ソフトウェアの開発を行っています。FPGAを用いて複数のCMOSカメラからの映像を高速に処理しています。映像はEthernetによってオペレータの手元に送信されます。この技術を用い、数十個というカメラを張りめぐらせ、百目小僧のようなロボットの開発を行っています。 |
遠隔操縦ロボットの操作を行いやすくすることを目的として,力覚を用いて操縦者にロボットの傾斜情報などを呈示するデバイスの開発をしています。非接地型の力発生装置を市販のコントローラに付加し、可搬性を得ています。これによって、手に力覚を与えて擬似的に傾斜情報を表現します。 |
2012年3月に発生した東日本大震災における福島第一原子力発電所(福島原発)での事故対応の一環として,当研究室を含む東北大学・千葉工業大学・国際レスキューシステム研究機構(IRS)で共同開発したQuinceを福島原発内に投入しました. |