飛行ロボットによる災害・インフラ調査

地上移動ロボットでは走破できない大きな障害物がある被災環境の探査や,高所にある設備の定期点検を飛行ロボット(ドローン)で行うための技術を開発しています.球殻で守られたぶつかっても落ちないドローンや,構造物に吸着し長時間の定点作業ができるドローンなどがその一例です.

ぶつかっても落ちないドローン(球殻ヘリ)の研究

入り組んだ環境では気流が乱れるためドローンの飛行は安定しにくくなります。またプロペラが周囲の物にぶつかって壊れると飛行できなくなってしまうため、見たい対象物にギリギリまで近づくことができません。この問題を解決するため、逆転の発想で、球殻で守られたぶつかっても落ちないドローンを開発しています。球殻は内側のドローン本体と独立に回転するため、ぶつかった際は球殻のみが回転し本体はバランスを保ったまま飛行を続けることができます。また、球殻をタイヤのように使い、壁や天井といった点検対象の表面を転がりながら接写映像を撮ることができます。

水谷将馬,岡田佳都,柳村一成,矢野浩史,大野和則,田所諭,“汎用的な設計法に基づく受動回転球殻UAVの開発,” 第15回 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門 講演会, 東京都,2014

水谷将馬,大野和則,柳村一成,岡田佳都,竹内栄二朗,田所諭,“錯雑した構造体中での飛行が可能な回転球殻を有するクアッドロータ,”日本機械学会 ロボット工学・メカトロニクス講演会 2014,富山県,2014

構造物に吸着し長時間働けるドローン(吸着ヘリ)の研究

ドローンには臨時の通信中継や定点観測など、上空に長時間とどまるミッションが期待されます。しかしその一方で、ドローンは大量の空気をプロペラで吹き下ろす反動で浮上するため、飛行のために莫大な電力を消費し長時間飛び続けることができません。この問題を解決するため、金属構造物に磁力で吸着することで長時間上空にとどまることのできるドローンを開発しています。吸着後はプロペラを停止できるため、中継器や観測カメラの作動以外にはバッテリの電力をほとんど消費しません(プロペラ停止後もワイヤを繰り出して蜘蛛のように上下方向の位置調整ができます)。そのため同サイズのドローンの飛行時間が最大でも30分程度なのに対し、このドローンは数時間にわたって定点ミッションが可能です。

K. Yanagimura, K. Ohno, Y. Okada, E. Takeuchi, S. Tadokoro, “Hovering of MAV by Using Magnetic Adhesion and Winch Mechanisms,” Proc. of the 2014 IEEE Intl. Conf. on Robotics and Automation (ICRA 2014), Hong Kong, China, 2014

柳村一成,大野和則,岡田佳都,水谷将馬,矢野浩史,田所諭,“スパイダーコプタ:複数の吸着機構を有するマルチコプタ,”第15回 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門 講演会, 東京都,2014

柳村一成,大野和則,岡田佳都,水谷将馬,矢野浩史,田所諭,“吸着巻取り機構を有するマルチコプタの開発,” 計測自動制御学会 東北支部50周年記念学術講演会,宮城県,2014

柳村一成,大野和則,岡田佳都,水谷将馬,竹内栄二朗,田所諭,“吸着機構を搭載したMAVの吸着性能の評価,” 日本機械学会 ロボット工学・メカトロニクス講演会 2014,富山県,2014

球殻ヘリと吸着ヘリの組み合わせによるインフラ点検の研究

上空の狭い場所に進入できる球殻ヘリと長時間の通信中継ができる吸着ヘリを組み合わせ,橋梁の定期点検を行う技術を企業と共同で開発しています.数年後の実用化を目指し,屋外の強風に対応できる飛行能力の強化や信頼性の向上,カメラや打音ハンマなどの点検装置の開発,球殻が写り込んだ画像を見やすくする画像処理技術,点検員から見通しのない環境での遠隔操縦など,多岐にわたるテーマに取り組んでいます.現在,橋梁の定期点検は人間が時間とお金をかけて足場を組んで実施していますが,足場不要のドローンの活用により時間とコストを大幅に節約できると考えています.

小浦慧視,岡田佳都,Carl John O. Salaan,大野和則,田所諭,“吸着力を調整できる永電磁式小型軽量吸着機構の開発とマルチコプタ搭載評価,” 第21回ロボティクスシンポジア講演予稿集,長崎県,2016

S.Mizutani, Y.Okada, C.J.Salaan, T.Ishii, K.Ohno, S.Tadokoro, “Proposal and Experimental Validation of a Design Strategy for a UAV with a Passive Rotating Spherical Shell,” the 2015 IEEE/RSJ Intl. Conf. on Intelligent Robots and Systems (IROS2015), Hamburg, Germany, 2015

岡田佳都,岡谷貴之,”橋梁点検を代替するための受動回転球殻を有するマルチコプターの開発と実橋梁における点検性能評価,”日本ロボット学会誌 Vol.34 No. 2,(一社)日本ロボット学会,2015

岡田佳都,石井拓麻,C.J.Salaan,大野和則,田所諭,“飛行ロボットによる橋梁近接目視点検のためのカメラシステムの開発と実用性能の定量評価,” 第16回 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門 講演会, 東京都,2015

石井拓麻,岡田佳都,大野和則,田所諭,“飛行体の機上カメラを用いた受動回転球殻の状態推定に関する研究,”日本機械学会 ロボット工学・メカトロニクス講演会 2015,京都府,2015

小浦慧視,岡田佳都,大野和則,田所諭,“永久磁石と電磁石を併用したマルチコプター用吸着装置の単体性能評価,”日本機械学会 ロボット工学・メカトロニクス講演会 2015,京都府,2015



地上ロボットと自律ドローンの連携による被災建造物探査の研究

地上ロボットと飛行ロボットがお互いの特長を活かしながら連携して被災建造物を探査するための技術を,企業や海外の大学と共同で開発しました.この方式では,ヘリポートを搭載した地上ロボットが,ドローンを運搬しながら探査を行います.地上ロボットが乗り越えられない大きさ障害物の先はドローンが地上ロボットから飛び立って与えられたルートを自律的に飛行し探査を行います.探査を終えたドローンはヘリポート上で充電されるため一つの探査ミッションの中で繰り返し使用できます.踏破性に限界はあるが長時間活動できる地上ロボットと,悪路に関係なく移動できるが活動時間の短いドローンをうまく組み合わせた研究です.

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