本プロジェクトは内閣府 最先端・次世代研究開発支援プログラムの支援を受けて行われています.採択プログラムの詳細はこちら.
皮膚感覚の拡張と転送を利用した運動機能サポートに関する研究
(研究代表者:昆陽雅司、期間:H23.2~H25年度)
本研究課題の着想は,高齢者の運動機能の低下は筋力の衰えだけでなく,運動を知覚する感覚系の衰えも一因にあると考えたことに始まります.日常生活でも,正座の後にしびれが切れて歩けなくなることがありますが,この原因は下肢感覚系の麻痺のためだと言われています.しかし,運動知覚に関与する体性感覚(力・位置の感覚や皮膚の感覚)のうち,皮膚感覚が運動知覚にどのように関わっているかは深く理解されていませんでした. これまでに我々の研究グループでは,ヒトの皮膚感覚が「ツルツル・ざらざら」といった対象物の触感を取得するためだけでなく,自らの運動情報や力覚の一部として利用されていることを実証してきました.例えば,手指の運動中に皮膚に特殊な振動刺激を加えることによって,手指全体に抵抗が加わったような力の錯覚が生じます.このような手法は,携帯情報端末上で利用可能な操作感フィードバック技術として応用が進められています. |
本研究では,これまで開発してきた触覚フィードバック技術を全身運動のサポート技術として拡張するものです.皮膚感覚が運動知覚に及ぼす影響とそのメカニズムを解明し,皮膚感覚を拡大,または他部位に転送することで運動機能をサポートする技術を開発します.歩行運動を対象に,筋骨格系を含む皮膚の振動伝搬現象を解明し,その情報を皮膚刺激によって再現・強化するための基盤技術を生み出します. また,本研究の応用として,高齢者の下肢の感覚の増幅・転送による転倒防止・歩行支援,手足に加わる負荷の感覚拡張によりリハビリやトレーニングを支援する技術や,疑似運動感を利用した操作性の高いインタフェースなど,幅広い応用分野を開拓します.特に,皮膚感覚の拡張と転送を利用した歩行支援というまったく新しい技術を実現するために,歩行に伴う皮膚感覚特性を調べ,この特性を利用した運動情報の計測装置と皮膚刺激装置の開発を行います.また,皮膚感覚フィードバックの強化によって日常的・安全に運動をサポートすることを目指し,小型軽量のデバイスによって皮膚を効率的に刺激するデバイスや,簡易な歩行運動計測手法などを開発します。 |
本研究は,これまで知られていなかった皮膚感覚の機能と役割を明らかにすることで,皮膚刺激による運動サポートという革新的な技術を提案し,新しいパラダイムを開拓します. ロボティクスの分野では,これまで運動サポート技術として,力の補助・増幅を行う技術が中心に開発されてきました.本研究では,感覚フィードバックの強化に着目することで,小型軽量の簡易なデバイスによって,運動をサポートすることが可能になると考えています. |
高齢化社会を迎える日本にとって,高齢者が自立を維持し,元気なままで安心して暮らせる技術の実現が望まれています.高齢者の転倒リスクを取り除く技術は,起立行動の不安・生活圏の縮小・筋骨格機能の低下という負の連鎖を断ち切り,高齢者の活性化を促すと期待されます. また,運動感覚を拡張・転送する技術は,効果的なリハビリや,義手・義足の感覚転送など高度な福祉医療機器の実現に寄与します.このような感覚フィードバックにこだわった独自の福祉医療機器の高度化は新しいライフ・イノベーション技術を生み出すと期待されます. |
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