ImPACT: タフロボティクスチャレンジ

概要:ImPACTタフロボティクスチャレンジについて

ImPACTタフロボティクスチャレンジは,ハイリスク・ハイインパクトな研究開発を促進し,持続的な発展性のあるイノベーションシステムの実現を目指した内閣府革新的研究開発プログラムの一部です.世界のなかで災害頻発国として数えられる日本では,近い将来,首都圏の直下型地震も起きると言われており,その対応策に迫られています.東日本大震災では,災害時におけるロボットの有用性が証明されたものの,時々刻々と変化する未知の環境下で本当に利用できるロボットの実現は,まだ道半ばです.

本プログラムでは,極限の災害現場でも,へこたれず,タフに仕事ができる遠隔自律ロボットの実現を目指し,屋外ロボットのカギとなる基盤技術を競争的環境下で研究開発し,未来の高度な屋外ロボットサービス事業開拓への礎を築いていくことを目的にしています.

(ImPACTプロジェクトのHP (http://www.jst.go.jp/impact/program/07.html)より一部改変して引用)

田所研究室では,上述したプログラムに関連して,細索状ロボット,サイバー救助犬のための技術,触覚伝送による遠隔操縦支援技術,探査環境を飛躍的に拡大する極限ロボット機構,の開発を担当しています.さらに,災害環境を模擬した屋内・屋外フィールドでの試験評価によって,極限の災害環境においても活躍するタフな技術であることを実証します.

細索状ロボット:極限の空間を探査する能動スコープカメラ

災害現場で被災者を救助するために,人間が近づくことの危険な倒壊家屋や倒壊建物内の情報を安全に取得することが求められています.そのためには,がれきの隙間を縫って進めるロボットが必要です.さらに,ロボットは瓦礫内でさまざまな情報を正確に取得する必要があります.内閣府革新的研究開発プログラム(ImPACT)の支援を受けて,東北大学,京都大学,早稲田大学,東京大学を中心に倒壊家屋内の探査・情報収集が可能な索状ロボットシステム(能動スコープカメラ)を開発しています.

これまで開発してきた索状ロボットは,胴体全体が傾斜した繊毛により覆われた長さ10m程のロボットです[1].内臓したモータで胴体に振動を加えることで,繊毛が地面と固着・滑りを繰り返し,前進方向への推進力を発生します.胴体全体で駆動力を発生できるため,狭歪空間の探査を行うことができます.先端にはカメラが搭載され,空気圧アクチュエータを用いて先端を上下左右に屈曲することができます.この機能により,進行方向の変更や,内部空間の見まわしが可能です.過去の能動スコープカメラの詳細や,繊毛駆動に関する研究についてはこちらをご参照ください.

索状ロボットを災害環境で実際に使えるようにするには,「モビリティ」の開発だけではなく,さまざまな情報を正確に取得するための「視覚」「聴覚」「触覚」が必要です.我々は,これまで開発してきた能動スコープカメラをベースにして,これらにかかわるさまざまな技術を他大学と協力して統合しています.我々の研究室では主に,「モビリティ」と「触覚」部分について研究開発を行っております.

サイバー救助犬:ロボット技術によって飛躍的に向上する救助犬の探査

災害救助犬は72時間以内に広範囲に存在する被災者を探査する方法として適していることが知られている。一方、日本では、実際の被災者探査にほとんど利用されていない。この原因の一つが、災害救助犬の探査の有効性を示す映像やデータが少ないことが考えられる。

本研究では、カメラ、GPS、慣性センサで災害救助犬の探査を記録し、可視化することで、災害救助犬の探査の有効性や信頼性を示すことを目指している。

触覚伝送技術による遠隔操縦支援

災害環境においてロボットが十分なパフォーマンスを発揮するためには,ロボットの性能を高めるだけでなく,操縦者の操縦能力,判断能力を高める必要があります.しかし,災害現場という過酷環境では,ロボットは遠隔操縦によって活動するため,操縦者がロボットより得られる環境情報は決して豊かではありません.そこで,私たちの研究グループでは,ロボットが環境と接触・衝突したい際に発生する振動情報を取得し操縦者に提示することで遠隔操縦を支援することを目指しています.索状ロボットおよび建設ロボットの遠隔操縦を対象に,環境との接触情報を取得するセンサシステム,および,操縦者に接触情報を提示するマルチモーダルなディスプレイシステムを開発しています.

索状ロボットでは,ロボット先端部で発生する衝突現象を高精度に検出し,その情報を,操縦インタフェースに搭載された振動ディスプレイを介して触覚的に操縦者に伝えられるとともに,カメラ映像に重畳することで視覚的にもフィードバックされます.これによって,操縦者はカメラ視野外での環境との接触に気付くことが可能となります.

建設ロボットでは,高感度の振動センサによって把持時の微小な振動を抽出し,微小でも操縦者が知覚しやすい振動信号に変調した後,操縦者に提示します.これによって,把持対象物や把持のタイミングという微小な接触情報を操縦者に伝え,遠隔操縦を支援します.

革新的なロボット機構:探査環境を飛躍的に拡大するメカニズム

更新中(近日公開予定)

災害環境を模擬した評価フィールド

これらの開発したロボットを評価するために,ImPACTタフロボティクスチャレンジの支援を受けて,東北大学にロボット評価フィールドが作成されています.

 

こちらは東北大学の新キャンパスの敷地に建設された屋外フィールドであり,索状ロボットのモビリティーを評価するための倒壊家屋を模擬したタワー(右写真)と瓦礫や,ドローンが飛行して実験を行うためのフィールド,土砂災害への対応を想定した建設ロボットの作業フィールド,救助犬が閉じ込められた救助者を探すためのフィールドからなります.タワー内部の写真は以下であり,震災で倒壊した家屋を参考に作られています.

  

また,レアメタル棟の内部にはプラントを模擬した屋内フィールドも作られております.ここでは,脚ロボットによる梯子の昇降,瓦礫上の走破,索状ロボットによる配管内外走行,階段昇降などの実験が行われております.

これらのフィールドでは,毎年2回(6月と11月),ImPACTタフロボティクスチャレンジのフィールド評価会を行っております.評価会では様々なロボットによるデモンストレーションが行われ,公開デモは申し込みすればどなたでも観覧することができます.申し込みなどの詳細はこちらのページの情報を参考にしてください.

http://www.jst.go.jp/impact/news/index.html

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